吉村酒造株式会社
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■日本の酒(講演集)


(1) はじめに


ただ今、ご紹介に与りました土田でございます。今日は日本酒について話をせよというご命令でございますが、最近は色々な洋酒がわが国に入って来ておりまして、洋酒にも色々の種類がありまして、先ず世界の中に、どういう酒があるかという事についてお話を申し上げたいと思います。それから日本酒の方へ入ってまいります。



(2) 世界の飲酒


お手元に差上げましたパンフレットは、丁度 日本土質工学会に話を頼まれまして、その時に使ったプリントで、大変申し訳ありませんが、それを使わせていただきます。
※残念ながら、講演当時に使用されたプリントが現存しないため、吉村酒造の注釈による補足をさせて頂きます。

先ず最初の頁ですが、1年間、世界の人達はどれだけの酒を飲んでいるかという統計が出ています。これは オランダの蒸留酒生産局というお役所が、毎年発表する調査資料ですが、この表は1979年 即ち3年前に発表された表でございます。

1 フランス 15.4L
2 スペイン 14.1L
3 西ドイツ 12.8L
4 イタリア 12.7L
5 スイス 10.6L
6 アメリカ 8.7L
7 イギリス 7.4L
31 日本 5.1L

1位がフランスで、15.4Lになっておりますが、これは色んなアルコール分の酒がありますので、これらを全部アルコール100%に換算した数字で示しています。この1位がフランス、日本は世界第31位に位しておりまして、1人当たりの年間消費量は5.1Lとなっています。
この数字は人口1人当たりの数字ですので、これをアルコール分15%の日本酒に換算しますと、大体30L位になります。
人口1人当たりですから、当然 大人子供も全部入り、ご婦人も全部入っていますから、5〜6人のうち1人が酒飲みだと考えますと、その酒飲みが飲んでいる量というのは、実に年間200Lになります。200Lと申しますと、1日2合ないし3合 飲まないと、これだけ飲みきれないと思います
から、かなりの大酒量だと思います。
私どもとしては洵に嬉しい事ではありますが、余り酔っ払い天国になってもと思います。それに致しましてもフランスの15.4Lというのは日本の優に3倍の量ですし、本当に恐ろしい数字といえます。

※土田先生の講演から約20年経った2000年の統計では、1位アイルランド(12.3L) 2位ルクセンブルク(12.1L) 3位ルーマニア(11.7L) 4位ポルトガル(10.8 L) 5位チェコ(10.6L)となっており、フランスとドイツは6位(10.5L) スペインは8位(10.0L) スイスは12位(9.2L)と飲酒量と順位を下げ、イタリアは21位(7.5L)、アメリカは26位(6.7L)と飲酒量や順位を大きく下げました。
これに対してイギリスは順位こそ15位に下がりましたが、8.4Lと飲酒量が増え、日本は、6.5L、28位と飲酒量、順位ともに上昇しました。



(3) アルコール発酵


 それでは、次の頁に入りまして、そこにありますように お酒の発酵には必ず、ブドウ糖というものが必要であり、ブドウ糖に酵母が働きましてアルコールを作る。これがアルコール発酵であります。従いまして、非常に原始的なお酒の造り方として考えられますのは、ただ果物を集めておいたところ、その果物が腐って、アルコールが出来た。その汁を口に入れてみると非常に旨い。そういう事で、それを飲みだしたというのが、そもそもの発端かと思います。

 自然界には、このブドウ糖を含んだもの、果汁あるいは糖蜜といったものがございます。これは量が限られておりますので、酒を造るにはブドウ糖をどうすれば作る事が出来るかということを考えねばなりません。そこで、その大元となる澱粉を糖化することが考え出された。従って酒類の原料としましては、澱粉を原料としたもの、それから果実のようなブドウ糖そのもの、この二種類と申してよいと思います。



(4) 単醗酵と並行醗酵


発酵の形式としまして、一応 ブドウ糖からアルコールを作る、これを「単発酵」と申しますし、澱粉から、一旦 ブドウ糖を作り、更にアルコールを作る、こういう形式を「複発酵」と申します。ビールの様に、糖化と発酵というものが、別々の桶で行われる方法を「単行複発酵」、日本酒の様に、糖化と発酵が1つの桶で行われるものを「並行複発酵」と言います。



(5) 糖化(麹と麦芽)


澱粉をブドウ糖に変える。これには色々な種類の糖化酵素が働いている訳でございますが、外国ではビール、ウイスキー等の場合の様に麦芽の酵素を利用していますし、中国大陸をはじめ朝鮮半島・日本等、東洋の場合、専ら麹の酵素を利用しておるわけであります。この麹を利用するというのは、西洋には全く見られない独自の糖化法であります。



(6) 醸造酒と蒸留酒


 このように、お酒というものは、発酵によって造られる。これが醸造酒 或いは発酵酒といわれるものでありまして、アルコール分も2〜3%から10%内外、最高が20%くらいで、それ以上のアルコール分のものを発酵によって造るのは不可能であります。醗酵法の酒の中でも日本酒は20%までアルコールを出すことが出来ます。これは並行複発酵という方式をとっているからだと言われております。とにかく発酵酒の中では一番アルコール収率の高い、技術水準の高い製法であります。

  このような発酵酒を、更に蒸留して造った酒が蒸留酒であります。蒸留酒になりますと、いくらでもアルコール分を高くする事が出来ますので、一般に酒として売られていますのは、20%〜60%に薄められております。三番目には醸造酒・蒸留酒を原料としたしまして色々ミックスして作ったもの。これを混成酒といっています。カクテルなどがこれに入ります。アルコール分は種々雑多であります。



(7) ビール


 次に、ビールの製造について申しますと、先ず大麦を発芽させまして麦芽を作り、これを或る程度加熱乾燥させまして、その麦芽の中に出来たヂアスターゼ糖化酵素を利用して、その麦芽自体を糖化させて糖化液を造ります。これへ、ホップを入れまして、ビール特有の芳香と苦みとを与えます。これに酵母を加えて醗酵させ、ビールを造るわけでございます。

  一般的にビールのアルコール分は4%位でありますが、日本のビールはドイツのビルゼンタイプでございます。ドイツでは色々のタイプがあり、アルコール分も色々ですが、日本の場合は各社とも大体 同じにしないと売りにくいと聞いております。黒ビールは、麦芽を少し強い目に焦がしますと色もつきますし、また焦げくさい匂いもついてきます。こうしたものを原料にして作ったものが黒ビールであります。更にアルコール分が約6%位あるスタウトというビールがあります。

  生ビールは、後発酵(こうはっこう)を済ませたものを濾過して、これを樽詰または瓶詰したものであります。
以前は、瓶ビールの場合、必ず加熱殺菌していましたが、最近は濾過技術が進んで無菌濾過が可能となり、各社とも「ビン生」という商品を出すようになりました。しかし生ビールというのは、やはり蔵から出しまして、1週間くらい迄が本当においしいのであります。これがやはり1月、2月経つと特に夏場などは、かなり味が低下して参ります。最近、生ビールがブームとなっていますが、ただ生ビールという感覚が受けて、各社共これに非常に力を入れているようです。



(8) ワイン(白ワインと赤ワイン)


葡萄酒は、フランスの特産のようにいわれますが、ドイツ、イタリア、スペイン等 ヨーロッパでは一般的に造られています。白ブドウ酒と赤ブドウ酒がありますが、白の方はブドウの果皮、種子などを全部除きまして、所謂ブドウ果汁だけを醗酵させたものでございます。それに対して赤ブドウ酒の方は、黒色系のブドウを使いまして、単にブドウの実を砕いたままで、これを醗酵させまして、その醗酵中に、果皮の中の色素が、果汁の中に移って来るということでございます。
従って白ブドウ酒の方は淡白な、あっさりとした味であり、赤ブドウ酒の方はその皮から参りますタンニン質により幾分渋味なども出て来ます。ですから白ブドウ酒は魚料理によく、赤ブドウ酒は肉料理によいといわれています。



(9) ワイン(品質とブドウ)


 ヨーロッパにはフランスのボルドウとか、ドイツのラインとか有名なワインの産地がありますが、ブドウは欧州系のブドウが香りも高いし、又あちらは雨量が少ないので、ブドウ果の糖分も高いという事で、ブドウ自体が良いわけです。ブドウ酒の場合、その品質は原料のブドウの果実の品質の良し悪しによって、大体70%〜80%決まってしまいます。従って、良いブドウを使えば、良いブドウ酒が出来るということで、その点、製造技術によって品質が決まる日本酒に比べて造り易いともいえます。

 ブドウ酒は、10%〜13%くらいのアルコール分があり、甘口と辛口とがあります。辛口はどちらかといえばテーブルワイン、食間酒に使われます。シャンパンは白ブドウ酒の一種ですが、これは瓶の中で後醗酵させまして途中で出来ました炭酸ガスを瓶の中に封じ込めたものです。

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