次に蒸留酒に入りまして、ウイスキーの話をします。製造法は先ずビールと同じ様な方法で、「もろみ」を造ります。只ビールの場合は途中でホップを入れますが、ウイスキーの場合はホップを入れない。それから麦芽を乾燥致します時、ウイスキーの場合は泥炭でいぶす。すなわち燻蒸する。この香がウイスキー独特の芳香に寄与します。そうして出来た「もろみ」を、ポットスチールという簡単な蒸留器で蒸留します。
蒸留直後は大体60%くらいのアルコール分がありますが、これは非常に青臭いもので、凡そウイスキーとは縁遠い何ともいえぬ香りを致していますが、これを樽につめまして、長年貯蔵しますと、樽からの香り、或いはアルコールの熟成によって、所謂モルトウイスキーとなります。
このモルトウイスキーにグレンウイスキーといわれる穀物からとりましたウイスキーをブレンドし、製品と致します。所謂スコッチは、昔はモルトウイスキーばかりだったそうですが、10年、20年と貯蔵いたしますと、味は熟成して円くなってきますものの、樽の香りなどが強くて、かえって飲みにくくなります。ある時スコッチが余り高いものですから、安く売るためにグレンウイスキーをブレンドして出してきたところが却ってその方が飲み易いというので、一部の人に次第に飲まれだす様になりました。
当時この様なブレンドウイスキーにスコッチウイスキーという名前をつけるのはけしからんという猛反対があったそうですが、現在では殆どブレンドウイスキーとなっています。現在、日本のウイスキーも勿論このブレンドウイスキーが主流です。
※モルトウイスキーは、麦芽(モルト)を発酵させて単式蒸溜器(ポットスチル)で2回蒸溜し、オーク樽で熟成したウイスキーで、風味の個性が強いため「ラウド(声高な)スピリッツ」といわれています。
これに対して、グレンウイスキーは、麦芽とトウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類を原料として、連続式蒸溜機で蒸溜し、オーク樽で熟成したウイスキーで、風味の軽い穏やかな性格のため「サイレント(静かな)スピリッツといわれています。 |