こうして出来た蒸し米に、独特の黄麹菌、種もやしといいますが、これをふりかけ40時間から42時間位で、麹を作ることが出来ます。皆さん方も召し上がっておられる味噌とか、醤油に使う麹も同じ様な手法で作っています。一方先程申しましたように、酒造りには酵母が必要であります。その酵母を培養する為に、酒母または(モト)ともいいますが、これを予め造っておきます。これはフラスコなどで培養した酵母を更に酒母の中で拡大培養するとお考え戴ければ結構であります。この辺は長年の経験によりまして一定の配合方法が出来ています。
酒母を原料にしまして、それへ蒸し米と麹と水を仕込んでいく。仕込み方法もフローシートにございますように、3段階に分けて仕込みます。即ち初添、仲添、留添と計4日間は要します。仕込みは3回ですが4日間に分けて仕込む。その理由としましては酒母というもので或る程度、酵母を培養してございますけれども、1つの醪を仕上げるためには尚酵母数が足りない。
従って蒸米、麹を段階的に加えて酵母の培養を図って行こうという考え方で3段仕込みと言っています。
これなんかは、本当に現在でこそ化学が発達しまして、色々な理由づけがされていますけれど、こうした仕込方法が江戸時代に或る程度確立されていた事を考えると、昔の酒造家の科学的な実施法を痛感させられます。
※通常、酒母は仕込み全体量の7カラ%程度と少ないので、大量の原料(蒸米・麹・水)を一度に添加して仕込むと酒母中の酸度と酵母数の割合が急激に低くなってしまうので、酵母の増殖が追いつけず、雑菌に汚染される可能性が高い。そこで何回かに分けて添加し、適切な酵母の増殖を図りながら仕込む方法がとられた。これを「酘仕込み」や「段仕込み」または「段掛法」といい、古来より行われてきました。
1日目は「初添」といって、酒母に水+麹+蒸米を加えます。(12℃〜13℃で仕込)
※ 酒母の3倍量になります
2日目は「踊り」という休日をとって、酵母の対数増殖を図ります。
3日目は「仲添」といって、更に水+麹+蒸米を加えます。(9℃〜10℃で仕込)
※ 酒母の7倍量になります
4日目は「留添」といって、更に水+麹+蒸米を加えます。(7℃〜8℃で仕込)
※ 酒母の14倍量になります
そして、4日間の仕込みが完了する訳です。 配合はある程度決まっていますが、各蔵で、配合の割合を調整させています。
仕込みが進むに従って温度を下げていくのは、容量の増加によって物量中の乳酸濃度が低下し、雑菌に汚染されやすくなるため、温度を下げて安全性を高めるのです。
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